割れ円錐
強いのに越したことはないが、 重要なことは、正確に叩くこと。 打製石器は、石を叩き割ってつくる。 従って、出来の善し悪しは石の叩き方で決まる。 黒曜石の割れには法則性があり、 表面を叩くと内部に割れ円錐が生じる。 つまり、決まった角度でヒビが入る。 この割れ円錐の大きさは、打点の大小、打撃の強弱、 そして、ハンマーの材質で変わる。 上手く割れない原因が、叩く力不足と思われがちだが、...
View Article樹皮のシース
古い鉈の鞘はブドウの蔓など編組の鞘、 今も時々骨董市などで見かける。 最近の高級鉈の鞘は、サクラの樹皮を貼った樺細工。 以前、この鉈の鞘にならってサクラの樹皮で 黒曜石のナイフのシースをつくった。 ただ、鉈の鞘のように木の鞘に樹皮を貼付けたものでなく、 サクラの樹皮を、直接折り曲げてシースにした。 今は、もっぱらシラカバの樹皮でシースをつくっている。 シラカバの樹皮は、夏の間に剥いでおく。...
View Article重心
手にしっくりくる道具は、それなりの重さがある。 重さと言っても、重いということではなく、 持って使うのに手頃な重さ、丁度良い重さのこと。 今つくっている黒曜石のナイフは、 若干、重量不足の感じがしないでもないが、 全長23、4cmの標準的なナイフの場合、 ハンドルが流木だとすると、平均で100g前後。 数字にすると意外なほど軽い気がするが、 不思議なことに、黒曜石のナイフの場合、...
View Article黒曜石転石
黒曜石原産地を流れる常呂川、 町を縦貫するこの川を、昔は大川と呼んでいた。 大川には住宅地をつなぐ三つの橋が架かっている。 そう言えば、この橋の下や住宅地の河原で 黒曜石の転石を拾い集めたことがない。 黒曜石は原産地の山で簡単に手に入るので、 河原の黒曜石には、ほとんど興味がなかった。 原産地の川だけに、河原には黒曜石の転石がいっぱい。 驚くことに、最上流の水源域だというのに、...
View Article熱処理
黒曜石は天然のガラス、ガラスに強化ガラスがあるように 黒曜石の石器にも強化石器があるようだ。 旭川市博物館かどこかの研究報告だったと思うが、 黒曜石の石器を木灰中で加熱する石器の強化法。 出来上がった石器を30分ほど熾き火の中に入れ加熱すると、 表面の微細な傷がなくなり、壊れにくくなると言う。 表面の傷がなくなるというのは検証されているようだが、 実際どの程度素材が強化されたのかは不明。...
View Article軽量化
細石刃のナイフをつくっていて気がついた。 ナイフの軸、いわゆる刀身を木にすると、 非常に軽量なナイフが出来上がった。 仮に同じ長さ、大きさの黒曜石の尖頭器をつくったとしたら、 その重量は、細石刃のナイフの倍以上にはなるだろう。 また、黒曜石だけでつくろうとすると、 原石の大きさに限界があり、長く大きなものは難しいが、 細石刃の場合、軸さえあれば長さに際限はない。...
View Article所山産黒曜石
同じ黒曜石でも、硬質で透明度の高い黒曜石が石器に適材。 置戸産の場合、所山産の黒曜石がこの種の黒曜石。 ただし、所山産すべてが、この黒曜石という訳ではない。 適材の外観での判別は難しいが、 叩いた時の音で、簡単に判別することができる。 四国のサヌカイトがカンカン石であれば、 所山の黒曜石はチンチン石、甲高い金属音のような音。 この音を立てる黒曜石は、間違いなく適材。...
View Article転換期
石器は一種の彫刻、そのつくり方は引き算、 剥離の失敗は、取り返しがつかない。 素材を彫り刻んで、ものをつくる彫刻は、 決して、その素材の大きさ以上のものはつくれない。 石器時代の深層心理は、このマイナス思考かもしれない。 縄文時代になると、土器が出現する、 土器は一種の塑造、そのつくり方は足し算、 石器とは真逆のつくり方、プラス思考かもしれない。 石器の最終形に細石刃の石器があるが、...
View Article火打石
暗闇で石器をつくると火花が散る。 もちろん角のハンマーの時は、火花は出ないが、 石のハンマーの時は火花が出る。 特に面白いのは、黒曜石の石器の刃潰しをする際、 同じ黒曜石の原石の平らな面に擦り付けると、 その面に筋状の赤い火花が走る。 日中は、まったく気づかないことだが、 夜の石器づくりは、線香花火大会。 そう言えばフリントは火打石のこと 火打石を使った着火方法は、...
View Article実測図
発掘調査報告書に無くてはならない石器実測図。 今時手書きの線画とは、いかがなものかと思っていたが、 これが、実物を表現するには写真より優れもの。 その実力は、写真と比べれば一目瞭然、 なんたって剥離痕、剥離面が写真より良く分かる。 でも、本当は今の高度な写真技術を以てすれば、 実測図並の描写は可能だと思うが、 そこまで経費をかけることが出来ないためかもしれない。...
View Article細石刃
尖頭器等を薄く仕上げることは、切断力を増すこと。 刃物は薄くするほど鋭い刃になり、切れ味が良くなる。 石器の仕立ても器体を薄くする方向に、進化してきたと思っている。 その究極の石器が細石刃の石器だろう。 石器は薄くする程折れやすくなるという欠陥がある。 細石刃の石器は、この問題を柔素材の軸を用いることで解決した。 疑問に感じていた微細、極小の細石刃も、 極薄の刃とすれば納得がいくが、...
View Article石器づくり
偶然、まったくの偶然の出会い。 標津町でのオートキャンプの帰り道、 ポー川史跡自然公園で、しべつ縄文まつりが行われていた。 史跡、縄文につられて、寄り道したところ、 まつりのプログラムに石器づくり、これは見逃せない。 一番の関心事は、いまどきの石器づくり、 原材料や道具はどうなっているのだろう。 石器づくりのテントに行って驚いた。 以前、石器づくりで一度だけ交流のあった...
View Article細石核
細石核には様々な形があり、 それぞれに出土地ごとの型式名が付けられている。 置戸安住遺跡からは、そのほとんどの型式の細石核が出土している。 細石核は、細石刃を剥離した残核とされているが、 剥離中途の石核でもあると思っている。 それにしても不思議な事に、肝心の細石刃と 一緒に出土することは、めったに無い。 単純で細石核らしい細石核が、円錐形の置戸型細石核。...
View Article黒曜石
町内には黒曜石の原産地が二カ所、 この二つの原産地は、沢を挟んで隣同士。 つまり、沢には両方の山の黒曜石が流入している。 西側の所山は、硬質で透明度の高い黒曜石、 東側の置戸山は、軟質で白い粒の混じる黒曜石、 両方に共通するのが灰色の縞模様。 置戸産黒曜石の特徴は、この灰色かも知れない。 特に所山産の硬質の黒曜石は、道内で産出する黒曜石の中でも 石器の素材には最高、最適な黒曜石だと思っている。...
View Article離頭銛
離頭銛、回転銛とも呼ばれるこの銛は、 主に海獣の捕獲に用いられる。 長い柄の先に着けられた銛先が、 刺さった獲物の体内で、柄から外れるのが特徴。 銛先は、返しの付いた骨製の台に黒曜石の矢尻が着いている。 そして、その銛先には紐が通されている。 外れた銛先はボタンをかける様に皮下に留まり、 紐で獲物を引き寄せる、海上で確実に回収できる合理的な銛。 回転銛は、原始的な釣り針に似ている。...
View Article打面調整具
打面調整具、石器づくりには欠くことのできない道具だと思っているが、 不思議なことに、石器づくりのどの解説書にも登場しない。 かろうじてそれらしき説明に、磨り石というものがあるが、 打面調整を磨るとは全く誤解を招く、また、擦り石だとしても同じこと。 打面調整とは、「割れ円錐の頂点上に水平面を用意すること」 理論的には、そう言うことだが、実際には打点をつくること。...
View Article石器の全長
石器には原石を打ち欠いてつくったものと、 剥片を打ち欠いてつくったものの二通り。 でも、尖頭器など両面調整されたものは、 どちらの方法でつくられたものか判別不能。 また、剥片には裏面と表面があるが、 同じく、その判別は非常に難しい。 大きな原石が手に入らない今となっては、 石器をつくる時は、材料の大きさを最大限 生かすことに心がけている。 石器の全長は、材料の表面又は断面の対角線上にもってくる。...
View Article焚火
所山工房で石器づくり。 町内黒曜石原産地の一つ所山、 この所山に工房を建てて2年目の秋、 工房周辺で拾い集めた黒曜石での石器づくりも本格化。 石器づくりは、径1.2mの石組みの炉の前で行っている。 炉は焚火用、切り倒した木でつくった薪で盛大な焚火、 炎の字は焚火の炎から出来たと実感。 石器の製作屑や失敗作は、すべて火床に、 決して他には散らかさない。...
View Article鹿角ハンマー
鹿角ハンマーは、使いきれないだけ持っているが、 新しくつくることは面白いし止められない。 鹿角は、この辺りでは容易に手に入る。 エゾシカの生息地であり狩猟区でもある。 以前は春先に鹿の寝床に行って、たくさんの落ち角を拾ってきたが、 その寝床も、狩猟の影響で山奥に移動してしまった。 鹿角のハンマーは、角座と呼ばれる角の付け根を頭にする。 付け根のところの枝角は、鉄切り鋸を使って切り落とす。...
View Articleアスファルト
矢尻を矢柄に装着する際の接着剤は何、 遺物から判っているのはアスファルト。 道南の縄文時代の遺跡からは、 土器に蓄えられたアスファルトが出土している。 海外産の天然アスファルトで、この矢尻の接着を試みた。 先に矢柄の先端に切れ込みをいれ、矢尻の中子を差し込んでみる、 しっかりと中子の元まで、切り込みに入ることを確認した後、 切り込みに溶かしたアスファルトを塗り込む。...
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